静焔

1992年ごろに活動してセルフタイトルEP一枚と数曲を残して解散したアリゾナのバンド、firecrackerには、のちにSoul Whirling Somewhereとして始動するMichael Plaster氏が在籍していたらしい。firecrackerは4AD系譜の耽美ノイズロックを鳴らしていて、確かに両プロジェクトに通底する美学がある。イギリス・イプスウィッチのバンド、Bleachを聴きながら納豆をかき混ぜたら、食欲が減退した。「性犯罪者」「ロリコン」を意味する"nonce"という言葉を知った。

I was talking to a couple of Brits last night and learned the word “nonce” (slang for a pedophile). Anyone know the origins of the term? : r/etymology https://www.reddit.com/r/etymology/comments/e3txrd/i_was_talking_to_a_couple_of_brits_last_night_and/

このスレッドを見る限りだと、"nonsence"が語源に関係するか否かは不明っぽい。一年に一回くらい、富士山から滑落した人の配信動画をみてしまう。あの2019年の配信には四時間に渡るフルバージョンがあって、滑落するまでの最後の四時間を捉えたということになるが、動画の端々には観光客や登山客とすれ違うシーンがあり、その一瞬一瞬の温もりが強烈に感じられる。山の対義語は街だ。登山をとくに好まないのにも関わらず山岳事故についての記録に定期的に触れているのは、それだけわたしが生きるということに執着しているからなのだと思う。ライブのチケットに当たる夢をみて、そうだ現実でもライブチケットの抽選に応募していた、と思い出し、確認してみたら当選していた。フランスのバンド、Les Thugsは、ちょうどポストハードコアとシューゲイザーの架け橋みたいなことをやっていて、音への認識が広がる感覚がある。その感覚を経ると、Unwoundのラストアルバムの数曲はシューゲイザー/ポストロック風だと思うし、Bastroの"Tobacco in the Sink"なんかもシューゲ風に聞こえる。等しくノイジーで竜巻のような感じがしたら、ラベリング関係なくシューゲイザーに聞こえる。わたしは、ギターノイズ(A)と等しく高い音圧(B)と耽美性(C)、このうち二つが揃えばシューゲイザーとして、あるいはその関連作品として受け入れてしまう場合が多い気がする。ABC:My Bloody ValentineLoveless』、AB:Swervedriver『Raise』、AC:Ride『Nowhere』、BC:Cocteau Twins『Heaven or Las Vegas』、みたいなイメージ。死ぬときに「わたしは何をしていたんだ」と思わずに済むように生きないと、とは思っている。死ぬ直前の一瞬をその後悔に使うのは情けない感じがする。CHAIのラストライブの配信を観た。ラスト三曲、"フューチャー"と"ほれちゃった"と"sayonara complex"はどれもキーボードやギターの浮遊感が強い楽曲で、夢をみているように一瞬だった。最後に演奏された"sayonara complex"のサビに差し掛かった瞬間に涙があふれて、涙を流すほど好きなバンドだったと実感が強まった。

CHAI「sayonara complex」

この曲のブリッジパート('I'll be new…'のところ)は間違いなくわたしの最も好きな音楽のひとつで、またCHAI自身もセットリストの最後に配置するほどこの曲に自信と愛着があったんだ、と感じることができて嬉しかった。良い思い出としてしまっておく。