明け渡すもの

スーパーの牛脂が無料なの、意味がわからない。Pia Fraus『In Solarium』を聴く。Spotifyのシャッフル再生で数曲を聞くばかりで、アルバム単位で聴いたのは初めてのことだった。かなり良くてびっくりした。トゥイー感と轟音が、ある。とちゅう強烈にStereolabみたいな曲が1曲あった。エストニア出身、バルト三国の最北地だと思うとかなり辺境だ。通勤ラッシュの中わたしの尊敬する人はどう振る舞うのだろう、ということを想像しながら朝の人混みを切り抜けていた。駅のトイレで用を足そうとしたら、同じくトイレに行くらしく私の前を歩いていた人が「ゲロ…」と呟いた。確かにそうだった。トイレへの通路の真ん中にあったので、わたしとその人は勿論、そそくさと踵を返した。わたしはその「ゲロ…」にいっさい反応できなかったのだが、その人は私に「あれは無いよな」みたいな視線を送った気がしたし、なんか、「あれは酷いですねー」くらいのことは返しておけばよかった。知らない人との会話という経験を増やすチャンスだったのに。わたしは東口、その人は西口のほうへ去った。ガリガリガリクソンガリットチュウが紛らわしいだとか、閏年でない年の2月が日曜日から始まればカレンダーがタテ4列で済むだとか、そういうことを考えていたら昼は終わっていた。わたしには楽器を演奏したり、作詞曲をしたりといった経験が全く無いのだが、音楽をやらないことで自分がすごい曲を書ける可能性を残している感じはある。浴槽に入浴剤を投入し訳の分からない気体が発生して、息が少し苦しくなるときにこそ生を実感する。母親が「ひき肉です」を「秋刀魚です」と勘違いしていた。The Veldt『Afrodisiac』を聴いた。シューゲイザー、というよりはドリームポップっぽいのかもしれない。4ADサウンド米国音楽の文脈に載った感じ。1994年の時点で、この音楽を1時間近い尺でリリースしたのは偉大すぎる。

サーストン・ムーアがSpotifyの批判をしている。ここに書かれていることは本当なのだろう。Sonic Youthほどの有名なバンドが撤退したら、何かが変わるのかもしれない。かく言うわたしもSpotifyのユーザーではあるのだが。「うまく」音楽を聴くには欠かせないインフラになってしまっている。もっと、へたに聴くことにシフトしても良いのかもしれない。むしろそちらの方が自然だ。先日CDを買った、割礼『ネイルフラン』を聴く。"君の写真"はスロウコアだ。1989年でこれはすごい。