たまゆら記

趣味にしろ生活の基盤となる場所にしろ、コンフォート・ゾーンは徐々に変容していくのですごい。現在の「落ち着きたいときに聴く(くらいとっておきの好きな)曲」と、5年前のそれは違っていて、でもその間には分断がなく、徐々に曲の好みが移行している。「自分が社会の中で身を置く場所」みたいなことにつけてもそれは同じで、高校生になりたての頃は苦しいが1年も経つとむしろそこが自分の居座れるコンフォート・ゾーンであり、社会に出ることのほうが億劫で恐ろしいことに思える。AI風情にはとうてい理解できない、この妙な現象、やっている全てのことがやがて自分になるという現象が、人間には起こる。Rocketship『Thanks to You』、かなり良いアルバムだ。2019年の作品だが、いかにも90sっぽくごちゃごちゃとしたギター・ポップ。音の新しさ、あとはバンドメンバーのほどよく年を重ねたボーカルもエキセントリックな感じが出ていて、20年越しにギター・ポップを見つめ直す、素朴な良さがある。ギターノイズ/エレクトロ風味を忍ばせる作風も健在だ。このツイートを投稿した人にチェックマークが付いていなかったらいいねをしていたな、というツイートはある。

きょうDiscogsを漁っていて知った、Lovebox『Wave Motion Engine』。ジャケットが面白くてどうしても惹かれる。1992年リリース。弱々しいボーカルと小刻みに振動するギターのバランス感は、Majesty Crushを思い出させる。SoundCloud公式っぽいアカウントがあって、そこでも"genre: shoegaze"と書いてある。90年代初頭のアメリカンシューゲイザーなんかだいたい底が知れていると思っていたが、まだまだ深淵はある。ナイフを持った人が自室に現れる妄想をしていた。ナイフを奪ってそいつを玄関から追い返したとして、そいつにまたナイフを回収されたらまずいのでナイフは家の中に留めておこう、などというシミュレーション。いざそういう事象に本当に巻き込まれたときには、わたしがいまこうやって悠長に考え尽くして出た最善の行動を、一瞬のうちにして実行しなければいけないのか、などと思い肝が冷える時間でもある。風船は「風の船」と書くのでかっこいい。外国人英語教師が個人経営している英会話教室に通っていた頃、大人の外国人どうしの口論を目撃して、かなりビビった記憶がある。その日わたしはそこで雇われたっぽい別の外国人の先生のクラスに出席していたのだが、そこの代表を務めている先生がとつぜんやってきて、英語で口論みたいなものを始めたと思ったらその雇われ先生みたいな人が帰ってしまい、けっきょくそのクラスの残り時間はその経営者の先生に英語を教わった。その雇われ先生みたいな人は、それ以降そのクラスには来なくなった。仮に解雇の通告だったとして、それを生徒の前でできるのはかなり凄い。活かして欲しい能力だ。いま、全ての手続きやシステムを放棄し、港の漁師のもとに向かって「漁師やらせてください」と懇願して、人生の全てを漁に捧げることも可能なのだな。きょう、とても有益な内容のブログ記事を見つけて読んでいたら、記事の最後にPayPayのIDが貼り付けてあって、「いいね!」する手を止めてしまった。The Depreciation Guild『Spirit Youth』、いいアルバムだなあ。