前にしている

Ovalのファースト・アルバム『Wohnton』を聴く。アンビエントからノイズまで幅広い電子音を織り込んだ歌ものグリッチ・ポップ、という異質さがうれしい。"Kardamom"という曲がほぼその後のOvalの作風を予見するような曲だった。隣家に住んでいた同じ学校の同級生の人が夏祭りに行ったという旨の自慢をしてきて、それに触発されて同じ夏祭りに行ったことがある。小学校くらいまでは、休み時間の教室で腕相撲大会みたいなやつが自然発生することがあった。テレビをつけたら、「プロの歌手に街中で歌わせて、それに対する投げ銭の額を予想する」という下衆な番組が放映されていた。他人から評価を得るということの怖さがある。人からの評価しだいで大喜びすることも、へこむこともある。Beautiful Happiness『Sundown EP』を聴く。1990年リリースのSonic Boomプロデュース作品。Spacemen 3ほどサイケに傾倒していなさそうなあくまでもインディー・ロック・ヘッズな演者に、本物のSpacemen 3の息がかかった、というような音。間延びしたようなギターのトーンと気だるいボーカルワーク、でも根底には快活さが残る。Spacemen 3並びにSpiritualizedやSpectrumなどにも入り込めていないわたしからすると、このくらいがちょうど良い。アンビエントグリッチなどの音楽は、どれだけ素晴らしい音が鳴ろうとフロアが湧きまくることはないはずで、それが心地よいとは思ってしまう。ビートのある音楽は、ビートがある時点でそれが人間の本能的な律動のようなものと共鳴してしまい、結果的に観客を「音楽なんて関係ない、踊ることさえできればいい」みたいなムードに陥れがちだと思っていて、その「盛り上がりの頂点はみんなで馬鹿騒ぎ」的な価値観に対して忌避感を覚える身としては、アンビエントの無為さ、作為のなさのようなものにかなり心地よさを覚えるし、憧れる。憧れるというよりも、固執したくなる、というほうが近いかもしれない。Terre Thaemlitz『Means from an End』を聴く。アンビエントまたはグリッチ、局所的にいたずらノイズ。暴力温泉芸者『Nation of Rhythm Slaves』を思い出すいたずらっぷり。