倫理問題

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朝、信号待ちで道路を挟んだ向かい側にいる人が倒れたときにその人を一緒に介抱して、学生だからという理由で先に行きな、と言ってくれた中岡さんはいま何をしているだろうか。その倒れた人は、今でもたまに見かける。歩いている。「甘さ」の反対って何だろう、と考えてしまった。辛さ、またはしょっぱさ。イヤホンの充電を外出先で切らして、無になっていた。初めてのことだったが、べつに、案外たまには環境音の中で移動するのも悪くないなあ、などとは思わなかった。残りの充電が10%になったときに、3つの音階で構成された、だんだん音階が下がってゆくサウンドが流れたため、それからはとつぜん充電が切れてもあまり残念感が出ないように、Vaporwaveを聴いていた。Vaporwaveは、ただ流れている、という捉え方で楽しんでいる。電車の中で突然、二人の人が走行中にも関わらず同時に移動したため、その双方がいた場所の近くに座っていた老人のほうを見てしまった。老人がなにか妄言を吐きはじめたとか、あっぷあっぷ言いはじめたとか、そういうやつかと。結局、べつになんの変哲もなく老人だった。アイドルの誕生日を祝うオタクのツイートに他のオタクがいいねをすることは、別に良いのだが、そこにはなにも本質が介在していないのですごい。モーニング娘。に漂うストイックさの練度はすごい。芸能界って感じがする。わたしは絶対に馴染めないだろうなと思う。もちろん、みんな仲良しみんな可愛いみたいなムードも存分にあるとは思うが、根底はやはりストイックで、そういう気質の人を集めてるよな、と感じることが多い。音楽を情報として捌くこと自体は楽しいのだが、それをすると、こんど音楽を聴くこと自体がつまらなくなってしまう感覚がある。言葉は、その使われ方と出典とともにリストアップしたら面白そうだ。併用されがちな言葉や文脈、さらには言葉の難易度、どれだけ表現として砕けているかが徐々に浮かび上がってくる。CDからパソコンに取り込んだ音源は手動でタイトルなどをいじることができるが、そのとき、タイトルの付け方がずっと気になってしまう。"Elvis On The Radio"という曲があったら、前置詞と冠詞を含む全ての言葉が大文字で始まるのはやぼったい感じがする、という理由で"Elvis on the Radio"と直したり、リミックス表記は「(Remix)」か、「[Remix]」か、「-Remix」なのか、みたいに悩んだりもする。作品によっては、前置詞はすべて小文字にしたりだとか、そういうところまで徹底されたものがトラックリスティングに連なっていることがあり、これを作った人もわたしと同じように些末なことが気になりすぎてよく狂いそうになるのだろうな、と思う。Bandcampに載っている音源を、試聴程度の気持ちでダウンロードせず聴いているとき、かなり聴いている感が希薄だ。やはり、何かしらは払ったほうが身が入る。

Mercury Rev系譜なのだが奇はてらいすぎず、ほどよく情報の多いネオサイケができてしまっているアルバム。久々に聴いている。とくにサイケまみれな印象もなく、根底はギターロックだ。金木犀を知っている人と知らない人、塩飴を舐める人と舐めない人、しっかりと「居る」人と「居ない」人が存在する二元論だ。